ロンドンに拠点を置くIRコンサルティング企業・Orient Capitalの調査によると、Mifid IIの施行以来、投資家からの企業へ直接のリクエスト件数が急増しており、英国企業のIRチームは業務負担が重くなっているという。昨年1月にMifid IIを導入したことで証券会社からの支援が減り、投資家が発行体に直接アプローチしてきたためIRチームが担うべき職務範囲が広がっており明らかにIRチームの負荷が増大しているということだ。
英国の350の大企業のIR担当者を対象とした調査によると、44%が社内リソースの不足が最大の問題としており、2017年の14%から3倍に増加した。中小型株指数であるFTSE 250の企業ではこの問題はより深刻で、この数字は50%に上昇している。一方大企業のトップ100企業では39%に留まっている点が特徴的だ。中小型株企業にとって難しい問題ではチームの人員が限られている場合、どのようにして小規模のIRチームが対処できるのだろうか。これに対して、Orient Capital CEOのAlison Owersは、IR Magazineに次のように語った。「外部のリソースを使うことにオープンになって適切なアドバイザーとサービスプロバイダーを使用する必要がある。そうすれば最終的にちゃんとしたIR機能を備えた組織になるはずだ。」
コーポレートガバナンスコードの要求のように、投資家とのより直接的な対話のためにロードショーを積極的に手配するなどIR担当者には大きなプレッシャーがかかっている。32%のIR担当者は投資家から直接ミーティングの設定依頼が増えたと回答しており、重要投資家へのプロアクティブなアプローチという課題と多くの投資家からの要求に応えなければならないというプレッシャーにさらされている。実際、この調査では平均的なIRチームの投資家ミーティング数は前年よりも24%多く実施したことが示さた。FTSE 350の代表的な企業は2017年の265のミーティング数から2018年は328となった。これに関してOwers氏は「この傾向がいつまで続くのか不明だが、IR担当者は投資家からの要求に応じて面談数を増やしており、動向は注視しまければならない」と語った。
良いニュースは、IRチームへの負担の増加がマネジメントに認められ予算の増加につながったことだ。全IR担当者の半数がMifid II以降IR予算が増加したと回答した。これは中小型のFTSE 250の企業(47%)よりも大型企業のFTSE 100(53%)がわずかに顕著であったが、この傾向が今後拡大するのかそれともこの程度のギャップで留まるのか不透明だ。
興味深い点はIR担当者の4分の1以上(26%)が人員が増えたと回答したが、それにもかかわらずリソースに対する懸念が高まっていることである。多くの企業で予算が増えても投資家からの高まるニーズに対応するには体制が不十分であることを示している。IRチームの作業負荷が増加し、投資家へ積極的なアプローチをとるようになるにつれて、利用可能な社内リソースを戦略的かつ効率的に使用することが重要となっている。
しかしながら、38%の会社は、第3者が提供する投資家ターゲティングレポートに不満で、エンゲージメントを形作るためにより詳細な投資家情報が必要だと考えている。
一方で、残念なことに投資家が考える自社の目標価格を理解していたIR担当者は12%だけで、「これはおそらく、発行体が投資家の考えや思考を理解するサポートを必要としていることを示している」とOwers氏は見ている。
そして同氏は次のように加えた。「大地震のような今回の規制変更は、IRチームの地盤を揺るがしている。証券会社の仲介が禁止され、投資家が直接コンタクトすることをますます求めているため、IRチームはより大きなプレッシャーにさらされている。同時に、証券会社のカバレッジが縮小したためIR担当者はより積極的なアプローチをとる必要が生じてる。これは時間とリソースの要求という点で大きな混乱を生み出しているのが現状だ。
IRチームが新しい世界に適応するには利用可能なリソースを出来る限り戦略的に使うことがこれまで以上に重要になっている。それは、投資家ターゲティングとミーティングの優先順位に沿った計画を立て、効率的なコミュニケーションを目指すことだ。飛行機が目的地と航路の情報がなければ飛ぶことができないのと同じように。」
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