市場の専門家によればアクティビズム(物言う株主)は欧州で重要な投資戦略として、また企業への交渉術として増加し続けると言われている。そのような環境下で企業のIR担当者はアクティビストへの最初の防衛ラインとしての役目と担うことになる。
「2018年 - ヨーロッパのアクティビズムレポート」は2019年には産業、化学、小売、医薬品などの分野で財務状態が良好な企業が益々アクティビスト投資家のターゲットになると予想している。この調査によれば、産業部門におけるアクティビストの新規要求件数は2018年は156%増加したという。金融部門も2番目に活発なセクターだったが、2017年と比較すれば9%の減少だった。2018年は欧州の中では英国が最も活発で23件の要求が開始され、フランスとチェコ共和国でも前年比増だった。スイス、イタリア、ドイツはアクティビストの活動が継続されているものの、活発度合いは2017年よりも低かった。
どのような要求が多かったと言えば取締役と経営陣の交代が要求リストのトップだった。ニューヨークに拠点を置くコンサル会社・アクテイビズムモニター社のWilliam Mace氏はIRマガジンに次のように語った。「経営陣の入れ替えを求める要求は全株主にとってのメリットになると主張することで、アクティビストが自身を自己中心的な短期投資家でないとアピールできるからだ。」
これらの要求に備えるために、取締役会とIR担当者はアクティビストのアプローチと彼らが行うかもしれない要求を早期に察知し、自社の強みと弱みを認識することが特に重要だ。「アクティビストに対する自社の脆弱性について一般投資家と議論することは重要なステップであり、単なるリップサービス以上の価値がある。」と彼は続けた。
「アクティビストは彼らの要求を通すためにその他株主の合意を必要としているので、アクティビストが持分や要求を公表する前から会社が長期投資家としっかりコミュニケーションを取って会社の戦略に理解を得ていることが重要だ。そのような準備は会社の取締役から始めるのが望ましい。例えば役員会や会社組織の在り方に異議を唱える取締役を部外者のアクティビストと仮定して対処するのも効果的だ。」
Mace氏はさらに続けた。「ヨーロッパのアクティビズムは投資戦略として、また企業への交渉術として増加し続けるだろう。2019年は欧州育ちのアクティビスト投資家が、彼らのローカルネットワークとローカル知識を活用して中規模のターゲットを継続的に攻めていくことが想定される。米アクティビストも欧州や英国の投資に対してより積極的になるだろう。アクティビストはバリュー投資家として市場の混乱時に真価を発揮するが、企業の事業ポートフォリオの見直しや高い値段のつきそうな資産売却などを求めてくるのが最近の傾向だ。」
アクティビストが弱いコーポレートガバナンス体制を突いてくることも想定される。欧州では今年6月に予定されている株主権利指針の改定(株主の権利を強化するもの)もアクティビストへの支援材料だ。これは投資家が法令に則り、取締役の独立性、報酬、在職期間など多くの点に疑義を挟むことができるような環境になる。
プロキシーアドバイザーのISSやグラスルイスの影響下にある米国と英国の機関投資家が欧州企業の株主として登場することは、コーポレートガバナンスの実態について厳しい目が注がれることになるだろう。
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