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過小評価されている気候変動リスク

​- 米大手運用会社・ブラックロックが警鐘 - 

IR Magazine Reporter, Andrew Holt

2019年4月10日

世界的な大手運用会社のブラックロックは、投資家は気候変動リスクの影響を過小評価しておりポートフォリオの脆弱性についての評価を再考する必要があると警鐘を鳴らしている。海面上昇や大型化するハリケーン、山火事、干ばつなど、気候変動の物理的な兆候は明らかであるが投資家によるリスク分析は十分でないと同社が現在行っている調査の途中経過レポートで主張している。同社の調査によると、米国のマーケットでは特に電力会社、商業用不動産、そして地方債において気象変動リスクが常に過小評価されていると言う。
「我々の現在の調査結果は投資家がその脆弱性の評価を再考しなければならないことを示唆してる」と同レポートは述べ次のように続けている。 「ハリケーンや山火事などの自然災害は、特に公益関連株式にとって過小評価されており、価格が上昇している地方債の自治体は気象変動リスクに直面している地域が多く、また多くの商業施設が洪水の被害リスクにさらされている。米国の山火事やハリケーン、ヨーロッパの熱波などの最近の極端な気象事象、および急速な人類の生活様式の変化に注目すると、気象変動は将来のリスク要因ではなく、今そこにある明白なリスクである。」と警告している。

「平均気温の上昇傾向は、極端な気象現象が発生する頻度とその強度を高めており、これらの変化は今日の私たちの経済活動に影響を及ぼしている。気象関連のリスクについて考えていない投資家、または将来のはるかに遠い先の問題として見なしている投資家は彼らの考えを改める必要がある。」と同レポートは警告している。

同社は近年の気象科学とデータ分析手法の向上により、気象データを効果的に分析することがより簡単になったという。同社の持続可能投資部門の責任者であるBrian Deeseは次のように述べた。 「地理情報とデータサイエンス、気候モデリングを含むデータ科学の組み合わせにより、気候関連リスクの投資への影響をより正確に評価できるようになった。我々の多くのお客様が長期投資家であり、受託者として長期的なリスク調整後リターンを向上するためにポートフォリオ全体でESG要因を統合する作業をしている。」

そして、気象関連リスクは多くの米国の州および地方債発行体の財務状態および信用度に脅威をもたらしている、と同レポートは警告している。現在のS&P地方債指数の15パーセント以上の構成銘柄は都市部であり、GDPの最大0.5パーセントから1パーセントまでの気候変動による損失を被る可能性が今後10年内にある地域だ。さらに言えば、58%の都市部は気候変動対策が何もとられなければ2060年から2080年までの間に年率1%以上のGDP損失を被る可能性がある。マイアミの異常気象によるGDP損失は既に1%以上を記録したがフロリダ州の想定は最悪で、いくつかの町や都市では沿岸部の暴風雨によりGDPの15%以上の損失が発生する可能性があるという。

報告書はまた、ハリケーンと洪水が商業用不動産にとっての重大なリスクであると警告している。マイアミとヒューストンの商業用不動産の80%近くが公的に認定された洪水リスク地域の対象外として融資を受けているが、これは災害時には保険の補償対象にならないことを意味している。

世界経済フォーラムは、2019年に世界経済が直面する最も差し迫った脅威として異常気象を挙げており、また国連もそれは食料問題の大きなリスクとして警告している。