Raymond Greaves 
Head of Research
finnCapp Ltd

24 Sep., 2020

大手企業の専売特許とされてきたESG格付けは、今や中小型企業にとっても必要不可欠なものに

 

ESGの目標達成を目指す中小型株企業へのアドバイス

過去数年間に、企業のESGへの取り組みを精査するファンドマネージャーや個人投資家が急増している。この増加傾向を加速させた要因は新型コロナウイルス危機だけではない。 更に、世代間での富の移転も進行している。今後30年間に、ベビーブーマー世代が保有する5兆5,000万ポンド(7兆ドル)の資産が、企業に社会貢献への拡大を求める声を強めているミレ二アル世代やZ世代(1990年代半ば~2000年代前半生まれの世代)に移動するだろう。  2019年には多くの投資家が炭素に大きく依存する産業への投資資産を「負の資産」と見なしたために、従来型株式ファンドから2,000億ドルの資金が流出する一方で、ESG重視型ファンドにはほぼ700億ドルの資金が流入した。新型コロナウイルスによるパニックは投資資金を長期ESG遵守指数へシフトさせこのギャップ拡大を加速させたことを鑑みれば、なぜ様々なセクターの企業がESG評価の向上にリソースを投入するかが理解できる。

 

これが企業からの投資家離れを防ぎ、新型コロナウイルスのリスクを軽減しているというのが一般的な見方である。実際に、1,000のデータポイントと37の主要課題による年一回の測定で高いスコアを獲得している企業が組み入れられているMSCI ESG指数が、年初来でMSCIグローバル指数をアウトパフォームしていることがこれを実証している。しかし、中小型株企業にとってはそれが悩みの種でもある。ポートフォリオ(長期パッシブストラテジーを重視しているポートフォリオも含む)の見直しは、ESG遵守を重視する方向にシフトし始めており、この環境下で規模の小さい企業は自社のESG適格性を証明するため、継続的に努力しなければならずリソースの確保に苦労している。ESGファクターを自社の組織構造の中心に据えている企業でさえそのような状況である。それらの企業は数千のデータポイントを備えておらず、サプライチェーンの各ファクターに関する実際の影響の定量化にリソースを投下できていないのが実情である。

2013年に発効したThe Quoted Companies Alliance (QCA)のAIM(英国の新興企業市場)及び小型株上場企業向けコーポレートガバナンスコードは、この問題への対処にある程度役立っている。企業はESGの目標達成に向けての前進を確かなものにするために、10の原則から成る前述のガバナンスコードを大まかなガイドラインとして活用することができる。 

面白いことに、finnCapが小型株のファンドマネージャーを対象に実施した最近の調査によれば、ESGファクターをポートフォリオの決定に活用するというマネージャーが多数派(3年前は少数派)となり、明らかに指数への準拠がより強くなっている。そのため、ファンドマネージャーが大企業の評価で利用するMSCI,、FTSE、Russell、S&PやSustainalyticsのレーティングと同様の方法で中小型株企業のESGを評価するための明確かつ洗練されたシステムが必要になっている。

finnCapのESGスコアカードは企業が厳格にこれを実行する上で有益であり、我々がランク評価を済ませた102社の初期の結果は様々な業種の企業が改善に利用できることを示唆している。スコアカードは、企業規模の大小にかかわらず容易に測定でき、且つ、実行できる次の15項目で構成されている。

環境 
1. エネルギー対策
2. 二酸化炭素対策 
3. 水対策
4. 廃棄物対策
5. 環境方針や持続可能性方針の有無  

社会  
6. 従業員の離職率 
7. 税引後利益率
8. 差別に関する方針の有無 
9. 地域貢献活動方針の有無 
10. 倫理方針の有無 

ガバナンス
11. 取締役会における女性の比率 
12. 取締役会における社外取締役の比率 
13. CEOの報酬が英国の給与の中央値の何倍に相当するのか
14. CEOと会長の役割は分けられているか? 
15. 該当するコーポレートガバナンスコード(QCAのコードなど)の遵守

企業が高いスコアを獲得するためには、E、S、Gの3つの分野全てに対処する必要がある。スコアカードの比重は均等であるため、1つの要素が他の要素よりも劣っていた場合にはレーティングが下がるため、スコアの改善を図る際にはアウトプットの全ての側面を考察することも重要である。

我々の調査では、セクターが異なるとカテゴリー毎にスコアの獲得に得手不得手があるという結果が出た。例えば、消費関連産業の場合にはガバナンスのスコアは比較的高く、テクノロジー、工業、サポートサービス、金融、ライフサイエンス、エネルギー業界を上回って1位だった。一方、S(社会)のスコアでは3位にとどまった。 

例えばカジュアルな消費者を接客するサービスセクターでは、専門的経験を要するライフサイエンスセクターよりも必然的に離職率が高くなる傾向がある。このような要因はそれぞれのセクター特性で説明できる一方、やむを得ないセクター特性でスコアを落としまう場合は地域貢献活動など他の領域でリカバリーする余地がある。(消費セクターでは50%しか地域貢献しているとの自覚がない)

同様に、環境や社会関連の領域でスコアが高いサポートサービス業界では、概してガバナンスのスコアが足を引っ張っている。同セクターでは取締役会に占める社外取締役の比率が半数に満たず、女性の取締役の比率はわずか14%である。

 

ESG全般に対する評価強化という急激な変化だけでなく、この評価測定を実施する方法が示すように、これらの要素を調べた上でスコアを上げることは今後重要である。ファンドマネージャーからのフィードバックによれば、現在は概ねESGのうちガバナンス要素(G)だけに重点を置いている傾向がある。だが、環境意識が高く、社会意識の強い投資家層がいることから、近い将来に環境(E)と社会(S)の要素がガバナンス(G)に追いつくことになるだろう。

企業は自社の業界に求められる1つの要素だけに重点を置くのではなく、環境、社会、ガバナンスの全ての側面について詳細に自己分析した上で、各分野においてそれらを確実に改善すべきであろう。なぜなら、今後の数年間に全ての要素が間違いなく評価ポイントに含まれることになるからである。 

(本記事は英国IR Media社の許諾の下日本語のみで配信しています。)

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